アメリカの写真家 ロバート・アダムスの写真集で一冊挙げるとするならばこの本を薦める。89年の
The Philadelphia Museum of Artでのキャリア前半を振り返った回顧展の際にApertureから出版された写真集。初期のいくつかのシリーズが網羅されている。
ロバート・アダムスについて、75年のNew Topographics 展に取り上げられた写真家で、アメリカの西部の風景が変えられていくさま、man-altered place を撮っているなど、プロフィールとして出てくるのだが、日本に生活しているとアメリカの西部(West)やこの写真家の作品を本当にどう捉えていいのか、わかりにくい。
ロバート・アダムスの前の世代にアンセル・アダムス(同じ苗字だが血縁関係にはない)やマイナーホワイトがいるが、手付かずのダイナミックな自然を、彼らが「これがアメリカだ」ということへのなにかしらの反発があったそうだが、それに対してルイス・ボルツやロバート・アダムスなど70年代に出てきた若いアーティスト達はどこにでもあるような生活環境、経済的、社会的な必要から生じた活動を通して現れた風景を、写真を使って提示したという、これまで読んできたものから私自身そんな解釈を得た。
自然環境が変わって人が住むことによって風景が変わっていく様子を撮っているといっても、いわゆるエコロジーの立場での告発ではなく、(ここからは上手く表現できる言葉が無いのだが) 人間が遠くに山が見える原野にたどりつき、そこに家を建て、道路をつくり、スーパーマーケットができ、云々。
山が造成され、マンションが建てられ、人が住んで新しい街となっていくのは、近年では私鉄沿線の郊外などでも見られるが、日本に住む私にとってそれらは自明にすぎて、ロバート・アダムスの写真に見られるようなその現象の驚きというか、着目に新鮮さを感じるのは難しいが、それにしても古典とされているものを見て何か社会を見る際に考えをめぐらす材料にはなるのかもしれない。
代表作とされる
The New West だけではよくわからなかっことが、連作で見ることでこの写真家がどこに向かって活動してきたのかわかりやすいものになっている。写真集がアマゾンでは少し高くなっているが、西ドイツ(ベルリンの壁が崩壊する前にまだあったころ)で印刷したもので(ハイライト飛び、シャドーの締まりもそこそこ)4,000円程度であればフェアな価格だと思うが。
Walker Evans: American Photographs Robert Adamsがきて、アレックソスの Sleeping by the Mississippi と、ある一部のアメリカ写真の系譜といえるだろう。
この写真家はギャラリーが作品が活発に取引されているというよりは、
Yale が一揃い収蔵して研究して展示するなど地味ながら社会として作品群が重要なものとして扱われているようだ。
(最後に...写真集が多く出版されているのだが、色んなものを撮っていて上のような解釈はある一部分の作品についてのもので、この写真家のことはやはり、まだわかりにくい。)
Robert Adams (photographer) - Wikipedia, the free encyclopedia
Robert Adams: the photographer who roved the prairies for 45 years | The Guardian
Robert Adams | The Place We Live | Yale University Art Gallery
p a r k: Robert Adams 写真家 ロバートアダムス 動画
Amazon.co.jp : To Make It Home: Photographs of the American West
Why People Photograph: Selected Essays and Reviews