1996年のエベレスト大量遭難の際にまさに事故にあった公募隊に参加していたジャーナリスト ジョン・クラカワー(Jon Krakauer) のベストセラー 「空へ」を基にして
”いると考えられる”映画。
映画版では現在の最新撮影技術を使ってこれまで撮影できなかったような映像のスペクタクルを体験できそうだが、ノンフィクション「空へ
(Into Thin Air)」は関係する参加者に丁寧にインタビューし、熟練のクライマーが率いる商業登山でなぜこれほどまでの事件が起こったのか、出来るだけ客観的事実に基づいて編まれた非常に読み応えのあるノンフィクション。
映画『エベレスト 3D』
公式サイト 11月6日(金)ロードショー
Amazon.co.jp : 空へ―「悪夢のエヴェレスト」1996年5月10日 (ヤマケイ文庫)
Everest [DVD] [Import]
以下一部ネタバレ注意
-----------------------------------------------------
映画「エベレスト 3D」を見てきたが、 映画の脚本の基になったと考えられる「空へ」とこの映画が奇妙な関係にある。
事故の際に起こった大部分の出来事の描写は、この事件が起こった公募登山隊に参加したジャーナリストであるジョン・クラカワー氏の「空へ」に出てくる内容に沿ったものを映像化している。この映画にも俳優が演じるクラカワー氏がたびたびでてくるのだが、少ないセリフを拾って並べるとわかるが、事故の原因のひとつがクラカワー氏と雑誌の取材にあることをほのめかし、随所でこの映画によってクラカワー氏が非難されている。
私はこのクラカワー氏の本を読んだことがきっかけとなって映画を観に行ったために、奇妙な居心地の悪さを感じた。
本に書いてあることが全て真実、真相だと思って受け入れてはいないが、実際、何がこの事故の原因となったか判じることができない複雑に絡まった要因がこの事故から学ぶことができるゆえに、この映画における事故の原因を特定の人物を責めるような脚本が陳腐に感じ取られた。
陳腐といえば、実際の事故に基づいた映画化とはいいながら、事実にない(なかったとは言えないが)妄想のシーケンスや登山者と家族とのドラマを絡める点も、”事実を基に脚本を書いた”という映画の成立形態として無理があった。
「エベレスト」のプレミア上映にはシェルパのアン・ドルジェ、生還した参加者のベック、事故の際に救助を行った著名な登山家であり映像作家であるデイビット・ブリーシアーズが笑顔で並んで写真に写っている。
一方「空へ」の著者クラカワー氏はこの映画に対して不快感を表明し、事実になかったディテールが捏造されていると述べ映画化権をソニーに渡したことを後悔、一方映画監督は不思議なことに書籍の「空へ」に基づいてこの映画を作っていないということを述べている。
なお、映像の点においては、空間の奥行きに意味があるSF映画の3Dと性質が違って、この映画において立体感といえば山の頂上を見上げたとき、氷の谷底を見下ろした時が主であまり意味を見出せず、また事件が語られる誰かの視点がない、かといって絶対的な客観性をとらず視点がゆれ、それゆえに、人の視座を置くことができない谷底から登山者を見る視点や、頂上より高い空から登山者を眺めるカメラの視点など唐突にでてくる不思議なアングルに戸惑いを感じるさせるシーンがあった。
Everest (2015 film) -
Wikipedia, the free encyclopedia
Behind The Devastating Drama Of The New Movie ‘Everest’ |
Here & Now
最後に、真実はどうであれ、数百万の大金支払ってエベレストの頂上に登るための公募登山隊の参加者に対して、ツアーの企画者が全ての責任を負うのは当然のこととして、ツアーに参加するということを決めたのはそれぞれの登山者で、それは人生の折々しなくてはならない選択や決断にたいして、自分自身がその選択をした直後に何が起ころうともその選択が起点になったことの自身の責任であることから決して逃れられないということをこの登山の映画と、書籍「空へ」によって再確認することとなる。
三浦雄一郎、野口健ら映画『エベレスト3D』を語る…
cyclestyle.net/
映画「エベレスト 3D」 日本人女優が語る撮影秘話 :
日本経済新聞