東京都写真美術館の技法解説によると、ダイトランスファープリントとは1950-90年代まで用いられた写真原稿の印刷技法。概要は以下のとおり。
”カラー写真を三色分解して、画像をレリーフでつくったマトリクスと称される支持体に染料を染み込ませ、専用の紙などに転染してカラー写真をつくる方式。クリアな発色と保存性にすぐれているとされ、カラー作品のオリジナル・プリントを制作する技法として使われたが、公害問題が発生し現在は行われていない。”
(東京都写真美術館 : 技法解説 より転載)
ウィリアム・エグルストンや、アーヴィング・ペン、それに映画監督 ヴィム・ヴェンダースの写真作品、NASAの記録写真が、ダイトランスファープロセスでプリントされていて、Chromogenic print(発色現像方式印画、あるいはタイプC - フィルムネガからのカラープリント)に比べ、色が濃密で、発色に大きな違いがある。技法を文章で理解するより、上の動画でその様子を見ると理解も早い。
なお使用している薬剤が強いため、ダイトランスファーで刷られたプリントを保管する際、他のプリントに害を及ぼすために、きちんと額にいれて密閉するなど保管については専門家に相談するなど、十分注意する必要がある。
保存など各種写真技法については、ベルトラン・ラヴェドリン著 「写真技法と保存の知識」(青幻舎)が大変有用な本。
2017年7月19日(水)写真保存の第一人者 ラヴェンドリン氏の『写真技法と保存の知識』 | 株式会社 資料保存器材
他の写真プリント制作プロセスについては下記のParis PhotoのGlossaryページにまとめられている。Dye(染料)とついた名前のもの、つまり化学反応ではなく染料を定着させるプロセスに、スライドフィルムをプリントするときの Dye destruction(ダイデストラクション 銀色素漂白方式印画 またはチバクローム 染料+損壊 )や、ポラロイドフィルムのパックに入っている染料が拡散して絵になる Dye Diffusion(ダイ・ディフュージョン 染料+拡散)がある。英語でも色んな呼称があり、日本語でも時代やメーカーによって呼称がいくつかあってややこしい。
ちなみにデジタル以降、広く使われている銀塩の紙にデジタルで露光するラムダプリント(Lambda C-type)も、タイプCと表記されている。
さまざまなプリント技法の用語集(英語)- Paris Photo Grand Palais
写真の現像におけるダイトランスファーという技術はどのようなものですか ...
Dye-transfer process - Wikipedia
Dye Transfer Printing
THE DYE TRANSFER PROCESS by David Doubley
Platinum print プラチナプリント
Amazon.co.jp : Full Moon
Los Alamos - William Eggleston
Wim Wenders - Pictures from the Surface of the Earth
The Book of Alternative Photographic Processes
写真技法と保存の知識