9.02.2015

Walther Konig ドイツの出版社からの新刊



ドイツの出版社 Walther Konig からの新刊。何度か出版されている Gerhard Richter"Atlas" の大判(長辺約50センチ)の4冊セット。リヒターの制作の基礎となる新聞のスクラップや写真の集積をこの出版に際してレイアウトしたもの。こちらは非常に価格が高い。

Atlas » Gerhard Richter



Marcel Duchampの作品の複製を収めた小型の持ち運びスーツケースが300部作られ、それらはだいたいにして美術館のガラスケースの中にみることができるが、今回手に入れやすい価格で複製が初めて発売される。 1500部限定。

From or by Marcel Duchamp or Rrose Sélavy 1935-1968: Box in a Valise

他にも国立国際美術館での展示も好評のWolfgang Tilllmansの絶版だった Abstract Pictures (2011)の再版などが秋頃。

8.31.2015

Gathered Leaves Alec Soth アレック ソス



Alec Soth / Interview / The Photographic Journal

このブログに幾度となくアレック・ソスについて、(細切れのメモを書いてきた。それぞれのシリーズ(Sleeping by the Mississippi, Niagara, Broken Manual etc.. )一冊の写真集をみれば、それぞれのテーマがわかるのだが、では写真家がその人生において、何を鑑賞者に伝えようとしているかは、それら作品の蓄積があって、遍歴を辿ることで初めて輪郭が現れでてくる。これが同時代に生きて現在進行形で制作する写真家を見ることの楽しみである。

暗室技師をするなどして生計を立てていたアレック・ソスは奨学金を得て、ようやく自分の作品制作を行うことが可能になり3ヶ月の旅をして (複数の写真家を収録した企画の写真集を除いて)初めての写真集 Sleeping by the Mississippi (Steidl 2004)を形にする。この写真は広い注目を集め高い評価を得た。

Sleeping by the Mississippi" はアメリカ人にとって特別な意味をもつミシシッピー川沿いを旅しながら写真を撮り、出来上がったものは同時にアメリカ写真の源流を遡る旅にもなっている。実際写真に被写体として後ろ姿が写っている William Eggleston や、Mitch EpsteinやJoel Sternfeld を想起させる写真、直接的ではないが、それらはアメリカ写真のモダニズム、Walker Evans にも行き着く。

「一枚の写真は誰でも撮れる、本当に素晴らしい写真集として形になったものは偉業となる」とインタビューで述べているように、複数の写真をセレクトし編集することで、それらに物語を語らせることに意義をみいだし、さらに自身の出版社Little Brown Mushroom をベースに写真集の活発な出版活動を行い、現代の写真家の中でもっとも注目を集めるうちの一人となった。

キャリア序盤での作品の質や知名度が充実したものとなり、2010年、地元ミネアポリスのWalker Art Centerでそれまでの活動を回顧する大規模な展示が開催された。またドキュメンタリ映画が作られるなどして、ますますメディアで頻繁に取り上げられよく目にされる人気者となった一方、作品 Broken Manual では 文明との関わりを絶って生活するアメリカの”世捨て人”を 取材しそのようなアメリカにおいての生き方に関心ももって活動している。

上の動画で述べられている最新作の”Songbook”では二年間かけて、アメリカ合衆国ならではの生活や文化、そういった地域の生活は消えつつあるそうだが、それらを元々自身も仕事としてやっていた地方紙の報道写真のように、フラッシュストロボを使ってモノクロで淡々と写真に収めたものだその写真はアレック・ソスにとって写真家として処女作となる最初期の作品 "Looking For Love" に似ていて、自身のルーツに大きな一周を経てまた辿り着いた。同じ点にたどり着いたとしても一周を経てたどり着いた自身のルーツは、より示唆に富み豊かな作品になっている。

彼の写真にみられる(翻訳しにくいが)「アメリカ性」(アメリカらしさ,アメリカという態 )に加えてBroken Manual, Songbookを通して得られた、「人間と人間の間にあるもの、社会と人間の間にあるもの、断絶と切実に自分以外の誰かを求める気持ち」といったテーマを手にして、今後の作品が楽しみになってきたところである。

ロンドンで写真と写真集の展覧会に際して作られたカタログが”Gathered Leaves”でこれまでだした四冊の本を小型化した複製版である。もともと美術に興味があった彼らしく、デュシャンの持ち運び可能の複製セット"Box in a Valise"を連想させるものである。

一応最新の本のAmazon販売リンクを貼っておくが、発売前の9月上旬までに予約するとサイン入りを買うことが出来る書店、ネット書店があるのでそちらを確認するのが良い。

Gathered Leaves: Photographs by Alec Soth
MACK - Alec Soth - Gathered Leaves
Alec Soth + Stacey Baker: This is what enduring love looks like | TED Talk | TED.com

Amazon.co.jp Gathered Leaves

8.19.2015

Michaël Borremans: Black Mould David Zwirner Books ボレマンス 展覧会 作品集 デイビット ツヴィルナー



Black Mould » David Zwirner  展示の様子
Michaël Borremans: Black Mould review – figments of a highly original mind | The Guardian
Deeply twisted: Wallpaper* Magazine
Michaël Borremans | The White Review

1993年開廊のニューヨークのコマーシャルギャラリー  David Zwirnerから、ミヒャエルボレマンスの新刊 "Black Mould"が発売。

David Zwirner Books · Black Mould



ちなみに著名なアートディーラー David Zwirner について... ビースティーボーイズ Mike Dの親父 Harold Diamond の提案でニューヨークに留学、ジャズドラマーとしての教育を受け、ドイツに帰国したのち、大手レコード会社で勤務。次第に作品を買い集めるようになり93年にニューヨーク・ソーホーにギャラリー開いた..と、経歴がWikipediaにある。他のギャラリーからどんどん人気のアーティストを引き抜き拡大しガゴシアンについで力を持つ、主にヨーロッパ出身のアーティストを抱えるDavid Zwirner Galleryを経営

Amazon.co.jp : Michael Borremans: Black Mould
Exhibitions at David Zwirner: 1994-2012
Wolfgang Tillmans. The Cars  
巨大化する現代アートビジネス

Edwin Zwakman Harbor (1995) と TEPCOの津波の状況の記録写真 エドウィン・ズワックマン







HARMONIA:Review Lunatique寮美千子の意見
東川町国際写真フェスティバル | 収蔵作品

ジオラマを作って撮影するオランダのアーティストの作品。Edwin Zwakman の写真を見たときになにか見覚えがあると、ふとこの東電の写真を思い出したのだが、同じようでいて、横位置と縦位置で枠が異なるし、何か地下に重機があると思っていたが、地下が写っていない。全然違う。

類似している点といえば、手前に建物の角。奥側上に煙と霧。右手奥に木と船のような建造物。位置は違うが、津波に埋もれた電信柱と、手前の棒状の物体が立っているのと。

上の写真が実際の光景で、下の写真は写真家が作った風景を撮った写真。上の写真は2011年3月11日の太平洋三陸沖を震源とする地震による津波が原子力発電所に達したときの写真で、下の写真は国土の1/4が海面下に位置するオランダ出身のアーティストによるもの。
作品集 Edwin Zwakman: Fake But Accurate は ギャラリー AKINCIのウェブサイトよりダウンロードが可能。 Fake but Accurat.pdf

カタログの最後にあるフロイトの「不気味なもの」からの引用。

"‘This uncanny is in reality nothing new or alien, but something which is familiar
and old-established in the mind and which has become alienated from it
only through the process of repression ... 

The uncanny [is] something which ought to have remained hidden
but has come to light.’ Sigmund Freud"  

(不気味なものは、真新しいものではなく、また、現実からかけ離れたところにあるのではなく、馴染みのあるもので、以前から頭の中にあるもので、それが抑圧されることによって表に顕れる。不気味なものは隠れたままでいなくてはならないが、明るみにでるものである。拙訳)

ドストエフスキーと父親殺し/不気味なもの (光文社古典新訳文庫)

p a r k: Thomas Demand トーマスデマンド