アメリカ・ミネアポリスの写真家 Alec Soth(アレック・ソス)についてのTweetが多めですが、現在 Walker Art Centerで開催中の"From Here to There: Alec Soth's America"のカタログが届いて、その編集のリズムがとてもよかったので簡単に紹介したいと思います。表紙は布張りで本の内容をユーモアを交えて伝えています。この表記の形式を以前どこかで見たことがあるのですが、いったいなんだったか。車の修理のマニュアルのような、いずれにしても何かその手のガイドブックをパロディにしています。
ガイドといえば、どことなくWilliam Eggleston's Guideの表紙と同じように、なにかしらヴィンテージでキッチュな風合いを出しているのでしょう。
前書きが来て、初期(90年代)のモノクロフィルムで撮影されたシリーズ。その間に区切りのいいところで織り込まれるなんともセンスがよくて安っぽい赤色の薄い紙を使ったページには、彼がブログに書き留めたエッセイがそのまま転載されています。著名な写真集のタイトルのこと(彼によるとエグルストンの写真集のタイトルはチャンピオンとのこと)"Soth"ってどう発音するのっていう質問に対する回答や、「ブログのコメントにアナログ VS デジタルかなんて議論はやめてくれ」といったものまでシリアスなものからユーモラスなものまで、インタールードとして彼の考えが差し込まれています。(例えば The Ballad of Good and Bad Titles « Alec Soth's Archived Blog)
Siri EngbergがJoel Sternfeldや映画の「パリ、テキサス」(ヴェンダースの映画に夢中だった時期があったそう。)Edward RuschaやWilliam Egglestonを引っ張ってきて解説している "Welcome to Utopia"というエッセイを導入部にして、代表作 "Sleeping By the Mississippi"が続きます。
また短いエッセイをはさみ ナイアガラの滝に取材した"Niagara" Paris Photoでばら撒かれたタブロイド版の"Last Days of W" やFashion Magazine: Paris / Minnesotaに収録されているイメージ。アレック・ソスは詩の引用を時折用いますが、この本でもアメリカの詩人 August Kleinzahlerの詩を引用しています。
Broken Manual from Little Brown Mushroom on Vimeo.
ゴス(Goth)ファッションの女性を撮った"Single Goth Seeks Same" これまでのシリーズとはちょっと変わった"Broken Manual"でこの本は終わります。と思ったら、裏表紙の見返しには手間をかけてちょっとした仕掛けがなされています。
いわゆる一般的な(中間)回顧展のカタログと同じように時系列順に作品が並べられているのですが、アメリカに拠点を置く作家自身がもっているであろう(都市以外の地域にひろがる)アメリカに対する愛情とシニカルな思いや、そこに住む人を見る時に湧き上がってくる感情が入り混じって現れてくる ”アメリカ性”と、形式として先人の写真作品からの影響と引用という”アメリカの写真の系譜”とを、装丁と編集と写真イメージが一緒になって一冊の本として形となった、カタログとして稀有によく出来た本だと思います。定価は60ドルですが円高のおかげでちょうど妥当な価格で入手可能です。サイズは 25.7 x 20.6 x 2.8 cmということでほぼB5サイズでお菓子のプリッツの箱くらいの厚さでハードカバーです。
DLK Collection: From Here to There: Alec Soth's America
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John Gossage "The Auckland Project"Alec Soth ジョンゴッセージ
Amazon.co.jp : Broken Manual
From Here to There: Alec Soth's America
John Gossage & Alec Soth: The Auckland Project
Friedlander
In the American West: 20th Anniversary Edition
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