1.20.2010

New Topographics ニュー・トポグラフィックスの写真家 LACMA

 
New Topographics from mike m on Vimeo. (LACMAの展覧会のコマーシャル映像)


70年代の写真の重要な潮流のひとつ、ニュー・トポグラフィックスを回顧する New Topographics: Photographs of a Man-Altered Landscape  展がアメリカ・ロサンゼルスのLACMA開かれました。写真史に必ずといってでてくる"New Topographics"というタームですが、ネット上にあるソースを見ながら少し勉強してみたいと思います。

ニューヨークのローチェスターにあるGeorge Eastman HouseでアシスタントキュレーターをしていたWilliam Jenkins がアーティストとコラボレーションという形でキュレーションを担当。9人の写真家が参加した展覧会が "New Topographics"展(1975)です。

8人のアメリカ人- Robert Adams, Lewis Baltz, Joe Deal,Frank Gohlke, Nicholas Nixon, John Schott, Stephen Shore, Henry Wessel Jr.  そしてデュセッルドルフ芸術大学で教えていたドイツ人夫妻 Bernd and Hilla Becher の合計9人のアーティスト/写真家が参加しました。


 
NEW TOPOGRAPHICS: Landscape Photography Then and Now from AIPAD
  上の動画はAIPADというニューヨークのフェアでのレクチャーの様子当時はそれほど注目されずに終わった
展示だったそうです。40分過ぎたくらいから参加したアーティストのひとりFrank Gohlke
ニュートポグラフィックという展示がどういうものだったか当時の状況を話しています。
Frank Gohlke の飄々としながら話される当時現場にいた本人ならではの言葉が印象的です。


この展覧会のポイントを英語のウィキペディアなどオンライン上のソース(不確かな部分もあることを承知の上で)を参照しながらまとめてみました。

1.一人につき10点ずつ出展。大型のヴューカメラを使っている写真家が多くを占めた。
2.キュレーターのWilliam Jenkins がこの展覧会の基調として、1960年代前半に本を使って写真作品を多数制作したアーティスト Edward Ruscha(エドワード・ルシェ)に言及した上で"a problem of style:"(スタイルの問題) "stylistic anonymity"("匿名性"というスタイル)というキーワードを掲げた。

次の一文がこの展覧会の特徴をよく言い表しています。


"それらの(展示された)写真はアーティスティックな”お飾り”(フリル)が取り払われ
トポグラフィックな位相までそぎ落とされ、視覚的な情報を伝えながらも、
だがしかし、美や感情や意見といったものは完全に除外されている。"

"The pictures were stripped of any artistic frills and reduced to an essentially topographic state, conveying substantial amounts of visual information but eschewing entirely the aspects of beauty, emotion and opinion,."


3.アンセル・アダムスやマイナー・ホワイトのように職人的、独学による写真家に対して、教職者や学校で(芸術の)専門教育を受けた(または、のちに受けた)写真家であったこと。
4.特にアダムス、ボルツ、ディール(Joe Deal)の作品に顕著であるように、アメリカの社会に対してアイロニック(皮肉)であり、批評的な視点であること


この展覧会は「写真を使ってこんなことが出来る」というひとつのモデルとなり、コンセプトやスタイルは、 直接的、間接的に現在もなお世界中の数多くの写真家に影響を与えています。(日本では柴田敏雄氏の初期作品にNew Topographicsからの強い影響が見られます。



展覧会に際して作られたカタログは、なかなかの厚さ(3センチ)でハードカバーのしっかりした作り。紙も印刷も素晴らしく、また75年の展覧会当時の資料も豊富。通してみるとアメリカ人アーティスト Edward Ruscha(エドワード・ルシェ)の一連の自作のアートブックに大きく触発されたのは明らかで、現代美術史とあわせてみるとこの出来事の理解が深まります。

また今なぜ ”New Topographics”かというのは、私の主観ですが、これまた一連のベッヒャーの生徒(Düsseldorfer Photoschule もしくは Becher-Schule) アンドレアス・グルスキー、トーマス・シュトゥルート トーマス・ルフたちが2000年代に大きな注目を集め写真史を引っ張ってきたのに対して、「もともとこれらのアーティストに影響を与えたのはアメリカの展覧会だぜ」とようやくアメリカ人が気付いた、ドイツ人に気付かされて再評価にいたったというのが実際のところかなと考えます。

また日本であまりにも 「ニュー・トポグラフィックス」についての情報が見られなかったのも、それほど70年代当時の展覧会がアメリカでも話題とならず(そもそも写真作品がアートして取引もされていなかった)に、日本にまで情報が入ってこなかったということもあるかもしれませんが、川崎市民ミュージアムに巡回した1992年「ルイス・ボルツ展「法則」」の時にNew Topographics はどのように日本に紹介されたのか興味深いところです。

この回顧展はサンフランシスコ、オーストリア、ドイツ、オランダを終えて、スペインのビルバオに行きます。各地の展覧会で観衆にインスピレーションを与えていることでしょう。

Dwell:New Topographics at the SFMoMA (スライドショウ)
New Topographics: Photos of a Man-Altered Landscape
New Topographics - Wikipedia, the free encyclopedia
New Topographics - LACMA Home
UNFRAMED : Renewed Topographics (ルイスボルツの撮影した建物のその後の様子)

p.a.r.k: Photobook History 世界のフォトブック通史(写真集の本) 
Contemporary Photographers Toward A Social Landscape Nathan Lyon (1966)
To Make It Home: Photographs of the American West ロバート・アダムス
The History of Photography : ボーモントニューホール 写真史テキストの草分け
現代写真論 (晶文社) シャーロット・コットン (著) Charlotte Cotton

Amazon.co.jp : New Topographics
The Prototype Works
The New West: Landscapes Along the Colorado Front Range
Lewis Baltz Works
American Photography (Oxford History of Art)
Joe Deal: Southern California Photographs, 1976-86

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