名前と彼の写真集のタイトルを知っている人は多いけど、実際どんな人か意外と知られていない写真家のNick Waplington
彼の作品集Truth or Consequencesという写真集は”Truth or Consequences”という不思議な名前をもつニューメキシコの街(そこの住人が1950年代頃にあったクイズ番組の名前にちなんで街の名前にとつけた)で撮影された。
なにげない家の引き出しに眠っているようなスナップショットのフリをしたアメリカの田舎のこれまで何回も映画や写真集で見た事のあるイメージのそれは、エグルストンのDemocratic Forestやスティーブンショアの”それ”、フリードランダーのような写真もあればロバートアダムスの写真をカラーにしたような”あれ”もある。
副題は”A Personal History of American Photography from the Last Century”(前世紀のアメリカの写真の個人的なヒストリー)とあるようにWalker EvansやEdward Westonなど20世紀前半の写真家へのオマージュだということがわかる。
過去に著名な写真家により撮影された写真に対するオマージュを立てることによって、写真を見る人、彼(彼女)自身が実際に体験として見たものが掘り起こされる記憶(デジャヴュ)と同じように、体験を通していないにも関わらず、ある写真を見ることによって蓄積されたイメージのデジャヴュがトリガーとなって立ち上がってくる記憶。
森山大道氏がアジェや安井仲治へのオマージュをたてるのにも少し似ている。(森山氏のさらにすごい(したたかな)ところは、自分が過去に撮った写真までも繰り返し複製していることでもある。)
Nick Waplingtonは 現在もアーティストとして活動中だが、彼自身のウェブサイトはみつからず、ネットで調べた限りイギリス人の写真家と書かれていたり、イエメンに生まれて今はイスラエルに住んでいるという記述があったり、その街の名前のように”Truth or Consequences”(真実か、あるいは帰結か)、あるいは(Wikipediaで知る限り)ネット上に散らばっている彼についての情報が真実か、ニセモノか検証することすらも無意味で、つまりは彼の近作の展示のタイトルにもあるように"You Are Only What You See"(あなたは、あなたが見ているものに過ぎない)といっているのかもしれない。
ben huff . words & photographs
Amazon.co.jp : Truth or Consequences
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