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9.26.2010

Photo Critic Must Title 18 (Studio Voice 2004 vol.337) 写真について書かれた著作のリスト



2004年1月号のスタジオボイス(pg.64-65)の"Photo Critic Must Title 18"が渋いセレクションなのでこのポストにアーカイブしておきます。雑誌上では編集部選、研究者の日高優氏の選んだものが混ざっているをここでは(よりわかりやすく見渡すことができるので)分けて羅列しておきます。

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スタジオボイス編集部選

まずは写真ついて書かれた本の古典から
複製技術時代の芸術 (晶文社クラシックス)
明るい部屋―写真についての覚書
アメリカ写真を読む―歴史としてのイメージ

日本のベテラン写真評論家の著作から
20世紀写真史 (ちくま学芸文庫)
私写真論
なぜ未だ「プロヴォーク」か―森山大道、中平卓馬、荒木経惟の登場 (写真叢書)

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日高優選

写真論
American Photography
オリジナリティと反復―ロザリンド・クラウス美術評論集
消滅の技法
写真の哲学のために―テクノロジーとヴィジュアルカルチャー

そして日本の批評家の著作物からは
中平卓馬の写真論
写真論集成 (岩波現代文庫)
予兆としての写真―映像原論
視線の物語・写真の哲学 (講談社選書メチエ)
身体と空間
反写真論 (フォト・リーブル)
写真、時代に抗するもの (写真叢書)

以上2004年までに発売されているものからのセレクト。その後も沢山の本が書かれていますし、またひとくちに"写真”といっても幅広く、どの時代のどの写真のどんな側面に興味があるかによって本の選択も変わってきますが参考までということで。絶版になっている本も出てきているのでブログに書いて人の目に触れることによっていい本が復刊されるきっかけにもと思います。
個人的には現在群馬県立女子大学で教鞭に立たれている日高優氏のアメリカの70年代の写真についての短い記事を最近読んでそれがよかったので、現代アメリカ写真を読む―デモクラシーの眺望を手にとってみようと考えています。

Top 10 photography essays « eighteen39

Amazon.co.jp : 反解釈 (ちくま学芸文庫)
図説 写真小史 (ちくま学芸文庫)
現代アメリカ写真を読む―デモクラシーの眺望 (写真叢書)

5.25.2010

現代写真論 (晶文社) シャーロット・コットン (著) Charlotte Cotton コンテンポラリーアートとしての写真のゆくえ


(C)晶文社

The Photograph As Contemporary Art (World of Art)の表紙が代わって翻訳がでました。著者のCharlotte Cottonは錚々たる経験を積んできている著名なキューレター。Nick KnightのSHOWstudioにプロフィールがあります。LACMAで二年間キューレターとして重要な役割を担い、現在はロンドンに戻ってNational Media Museumに在籍。ロンドンのThe Photographers' Gallery, the Victoria and Albert Museum(V&A)という重要な美術館、ギャラリーにおいて重要な展示を担当しています。他にファッションフォトグラフの著作が他に数冊。ギィ・ブルダン、一番右側のケイトモスの表紙のものはコリーヌ・デイという写真家のファッションフォトの歴史にとってとても重要な写真。『現代写真論』は評論というよりは、写真というメディアを使って表現活動を行っているアーティストをおおまかな便宜上の分類に従って紹介するもので、多くの作家を紹介していること、分類がそもそも難しいこともあって散漫な印象も受けますが、アートフォトとはどういうものかの概要を掴むには最適な本だといえます。

Übungsplatz〔練習場〕;Charlotte Cotton "The Photograph As Contemporary Art" (Thames & Hudson)
Los Angels Times:LACMA photo curator Charlotte Cotton returns to England

Amazon.co.jp : 現代写真論
写真は魔術: アート・フォトグラフィーの未来形
The Photograph As Contemporary Art (World of Art)
写真空間〈3〉特集 レクチャー写真論!
Imperfect Beauty
写真の歴史 (「知の再発見」双書) クエンティン バジャック

3.30.2010

The Nature of Photographs Stephen Shore スティーブンショア


(C)Phaidon Press

アメリカの写真家、そして今、学校で教鞭もとるスティーブンショアがまとめた「写真とは?」という問いに対して丁寧にその構造を説明している良い本。

デザイン会社のウェブから書籍の内容のサンプル
no.1/no.2

公開されているレジメ(PDFファイル)でその内容が網羅されていますがこの本では美しい図録を具体的な例としてレジメの内容が展開されています。
そのレジュメを見ると、まず

・全ての写真は機械によるプロセスの産物である
・写真を”写真”として成立させる資質(qualities)を規定する

ことを前提としている。特筆すべきは、前半で”物理的な条件”として写真を成立させる要素を丁寧に説明していること。アサヒカメラで、写真家のホンマタカシさんも触れていて、それに対する氏の著作の”たのしい写真―よい子のための写真教室”とワークショップがそれに対する反応と実践といえそうです。

残念ながら今は英語版だけ。辞書があればある程度理解はできるかと思います。

Amazon.co.jp : The Nature of Photographs

3.26.2010

”話す写真 見えないものに向かって” 畠山 直哉さんの「話された写真論」

写真家 畠山直哉氏が、講演会やワークショップで話した内容を本人が再構成しまとめた「話された写真論」。

抽象的で壮大な内容をわかりやすくいつも説明されるので、トークショーの後は脳が小旅行をしたような感覚になります。写真を勉強なさっている方も、写真とはいったいどういうものなのかをこれから知りたいという方にもお勧めです。7月に発売予定。

畠山直哉展
Natural Stories ナチュラル・ストーリーズ
2011年10月1日 ( 土 ) ~ 12月4日 ( 日 )
東京写真美術館

文筆家・大竹昭子の書評ブログ : 『話す写真』畠山直哉(小学館)
Tokyo Art Beat : 落下した空を写真に
ニコン チャンネル : 畠山 直哉
タカ・イシイギャラリー : 畠山直哉 Naoya Hatakeyama 「光のマケット」
Limestone Blasts and Tokyo's Underground, Photog Studies Man vs. Nature | Raw File | Wired.com

Amazon.co.jp : 話す写真 見えないものに向かって
彼らが写真を手にした切実さを―《日本写真》の50年
苔のむすまで
UNDER CONSTRUCTION―「せんだいメディアテーク」写真集

3.05.2010

ウジェーヌ・アジェ回顧 東京都写真美術館編 (淡交社) アジェ 関連書籍 Eugene Atget アッジェ 巴黎

(C)淡交社


現代写真の父と(括弧つきで)呼ばれるウジェーヌ・アジェ(Eugene Atget)。彼は20世紀のパリで、前の世紀 - 19世紀の遺構を求めそれらの建築物や街路を撮影していました。

東京都写真美術館が刊行した資料も豊富な書籍”ウジェーヌ・アジェ回顧”という本。

どの時期にどの場所で実際何枚の写真を撮っていたのか、初めはパリ市内(城壁の内側)での撮影から、のちに郊外での撮影も平行して行い、再びパリ市内での撮影に重点をおいていたという撮影場所の軌跡。撮影した写真の点数でいうと10数年の間の記録 - 撮影点数が少ない年で150数点の写真、多いときで1911年の469点の写真を撮っていたことなど具体的な資料が巻末に掲載されていて、アジェについて研究する方にも参考文献になるであろう書籍です。

図録はアジェの撮ったモチーフが満遍なく、撮影された時期も横断してカバーされているので写真集としてもアジェ本の中ではいい構成。寸法は23.8 x 19.4 x 2.2 cm ということでB5くらい。




収録されている写真の中でユニークなもの。鏡に写ったアジェ(の機材)おそらくカメラの後にはアジェがいるはずです。以下、アジェ関連の書籍。

Atget: Paris (日本語版はアッジェ 巴黎
かなりの掲載点数、印刷と紙が写真にあっている、版のサイズは小さいながらも5.8センチの厚みがある決定版。印刷の質も悪くなく、この写真家の仕事を知るにはこれが一番お勧め。

Atget: Photographe De Paris (Book on Books)
Book on Booksシリーズ(オリジナルの初版の写真集を丸ごと複写したもの)

近年の研究(といっても10年以上前から)では伝説として語られてきたアジェは本来どんな写真家だったのか検証が進んできている。例えばなぜマン=レイに軽くて機動力のあるカメラを薦められたのに、箱型の重い旧式のカメラを使用したか。それについて「アジェが頑固に昔の機械に固執したとの」俗説があるが、パリの建物と建物の間を入り組んでいる街路では撮影したい建築物に対して引きの距離がないために、アオリがどうしても必要であったなど、研究が進んでいる。

アジェは森山大道氏も影響を述べているし、またリーフリードランダーにもアジェの木の写真を連想させる連作が。ジョンゴセッージは毎朝アジェの写真集を見てから撮影しにいくともインタビューで述べている。
Friedlander
Lee Friedlander: New Mexico

最後に日本語の書籍では知っている限り、大島洋さんの写真家としての視点の考察をまとめたもの、今橋映子さんの自腹をきって原本にあたって丁寧に調べられた以下の書籍が勉強にもなり、また読み物としても非常に面白い本でこれらもお勧め。

アジェのパリ
パリ・貧困と街路の詩学―1930年代外国人芸術家たち
“パリ写真”の世紀