先日横浜美術館にいった際に、シャーカフスキーのキュレーションしたかの有名な展覧会のカタログ”Mirrors and Windows: American Photography Since 1960” が図書館にあるのを見つけました。(このカタログの現物をみていなかったにも関わらず、この展覧会について述べられた文章を通してもっていた固定概念による)私がもっていた印象とは異なり実に様々な写真が取り上げられていることに驚き、さっそく古書をみつけ注文。
カタログに収録されている(展示された)写真は、ダイアン・アーバスやデュアン・マイケルズといった鏡(自らの内面を知るためにカメラを使う志向)を代表する写真家、そしてリー・フリードランダーやロバート・アダムス、ゲイリー・ウィノグランドといった窓(カメラを外の世界を見るための手段として使う)を代表する写真家による写真が収められているとよく見る前には思っていたのだが、そういった単純な区分けではなくどちらがどちらとも言えない写真も多く、モチーフや手法も多種多様。
デュアン・マイケルズの寓話的でユーモアのあるシーケンスで組んだ作品もあれば、美術家のロバート・ラウシェンバーグのコラージュ、ウォーホールのシルクスクリーンの作品。写真家もリチャード・ミズラックの初期の作品、リンダ・コナーに、エリオット・アーウィットとウィノグランドが隣り合わせ。前書きでシャーカフスキーが述べているように、この展覧会は”写真家”の展覧会ではなく”写真”についての展示だということがわかります。
どの写真史の本でも1章は割り当てられている 『鏡と窓』の項を読んでずっとわかったつもりでいたのですが、やっぱり自分で原本にあたってみないと思い違いしているというのが現時点での感想。
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その後シャーカフスキーによるプロローグを読むと、この "Mirrors and Windows" 展、またアメリカの1960年代における写真がどんな状況だったのか臨場感をもって知ることができる。
50年代はグラフ雑誌が写真家の活躍の舞台だったが、60年代に入って写真家が発表する手段として書籍や展示という選択肢がてできた。グラフ雑誌の衰退の理由として、テレビの普及、安い航空券が手に入るようになった(海外旅行を通して直接外国を知ることできる)ことがその要因として挙げられ、大衆(読者)のエキゾシズムを写真はもはや喚起できなくなった。さらにベトナム戦争は”こと”が大きすぎて、どの写真もこの戦争は一体何なのか.....その説明の役割を果たす能力を欠いていた。つまりアメリカ人にとってあの戦争は政治的、軍事的、倫理的な意味より、むしろ心理的な問題としての意味をもっていた。その心理的なインパクト、そのショックを思い起こさせたのが(報道写真ではなく)ダイアンアーバスの写真だったというわけだ。絵画ではなく写真を学ぶ学生が増え、また前世代の職人的な写真家(例えばアンセル・アダムス)から、写真学生の関心は制作(craft)ではなく中身(content)へとゆるやかに移って行った。...などなど(つづく)
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どの写真家が窓か鏡かという話ではなく、1960年以降の写真にみられる、自己表現の手段として (a means of self-expression)の写真、もうひとつが探求の方法 (a method of exploration)として写真、そんな写真としてのメディアの可能性が拡大したことを宣言することを意図して企画された展覧会がこの"Mirrors and Windows"だったとみてとれる。
ちなみにこのカタログは絶版。マーケットプレースではまだ買えそうです。ペーパーバックで印刷も展覧会当時の出版なので良くはありません。もちろん横浜美術館の図書館などでも閲覧可能。
他に John Szarkowski の編集した本で入手しやすい本 The Photographer's Eyeも写真を学ぶ人がまず初めに手にする本でお勧めです。(テキストは英語ですが文字数はあまりないのでトライしてみてください)
書肆小笠原:6277 Szarkowski, John[ed.] (ジョン・シャーカフスキー編)
TIME.com:Art: Mirrors and Windows
The Highlights,Reframing Mirrors and Windows, Farrah Karapetian
Amazon.co.jp :Mirrors and Windows: American Photography Since 1960. Catalog of Exhibition Held Museum of Modern Art, July 26-October 2, 1978
The Photographer's Eye
現代写真論
写真の読み方: 初期から現代までの世界の大写真家67人
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